幼い頃から、自分の「漏斗胸(ろうときょう)」という体型に強いコンプレックスを抱えて生きてきました。
実は中学校時代、私は水泳部に所属していました。体型に大きな悩みを抱えながらも、なぜか上半身を裸にする水泳部に入るという、今思えばかなりのチャレンジャーだったと思います。
入部当時はあまり気になっていませんでしたが、年頃になるにつれて部活の着替えやプールサイドでの周囲の視線が気になりはじめ、自分の中で「裸になること」自体が少しずつ苦手になっていきました。
大人になってからも、会社の社員旅行や温泉で「胸の凹みを見られたくない」と周囲の目を気にしてコソコソ隠れたり……。「命にかかわる病気ではない」と言われても、当事者にとっては青春時代から大人になった今でも、心の奥にずっしり残る大きな悩みです。

この記事では、水泳部時代から現在(アラフィフ)に至るまで、漏斗胸の見た目や周りの言葉に悩んできた私が体験した「漏斗胸あるある」や、コンプレックスとの向き合い方について、当事者目線でお話しします。
【体験談】漏斗胸の人が一度は言われる言葉・イジられ方あるある
掲示板などで見かける「キモい」「病気?」といった直接的で傷つく言葉は、幸いなことに私は言われたことがありませんでした。周りの人に恵まれていたのだと思います。
ただ、悪気がないと分かっていても、当事者としては妙に記憶に残ってしまうちょっとした言動やイジられ方はいくつかありました。
「秘孔をついた!お前はすでに死んでいる!」
中学校の頃、当時は大人気漫画「北斗の拳」が大ブームでした。
クラスの男子はみんなケンシロウの真似をして遊んでいたのですが、そのノリで私の胸の凹みあたりを指で指し「秘孔をついた!お前はすでに死んでいる!」とイジられることがよくありました。
子供同士のたわいもない遊びレベルだったのでイジメのような嫌な感じはなく、自分でも笑ってスルーしていましたが、「やっぱり胸の凹みに目がいってるんだな」と再認識する瞬間でもありました。
「胸の凹みで金魚が一匹飼えそう!」
泳げるようになりたい一心で入った中学校の水泳部でしたが、部員仲間はみんな良い人ばかりで、嫌なイジられ方をすることはありませんでした。
ただ、部活の休憩中に床で仰向けになって寝ていたとき、たまたま胸の凹みに水が少し溜まっていたことがありました。それを見た部員から「金魚が一匹くらい飼えそう!」と言われたことがあります。

言った本人に悪気はなく、私も鈍いのか当時は笑って流していましたが、今振り返ると「胸の凹み」を意識させられる独特な表現だったなと感じます。
言葉以外でのイジられ方「胸のくぼみに物を詰められる系」
言葉だけでなく、動作でイジられることもありました。基本的には「胸のくぼみに物を詰められる系」です。
例えば海水浴に行ったとき、仰向けで寝ていると胸の凹みに砂を入れられて平らにされたり、テニスや卓球をやっている時に服の上からピンポイントでボールを当ててきたり、自分の拳をすっぽりハメてきたり……。
どれも変な偏見を持たずに接してくれたからこそのノリだったので、当時は嫌な気持ちにもならず、本当に周りの友人に恵まれていたなと感謝しています。
「ガリガリだし、体型が餓鬼っぽい?」
言葉として直接言われたわけではありませんが、自分の中でずっと気になっていたのが「見た目の体型」です。
漏斗胸(特に中度以上)の人は、胸の厚みがないぶん、普通にしていてもお腹が前に出ているように見えてしまいます。例えるなら「餓鬼っぽい体型」です。
太っているわけでもないのにガリガリで胸に肉がなく、お腹だけが目立ってしまう……。若い頃はこれが本当に嫌で、プールの授業や夏の薄着の季節、健康診断のときは、いつもお腹に力を入れて凹ませ、少しでも体型の悪さを誤魔化そうと必死でした(実は今でもやってしまいます)。
大人になってからの漏斗胸の悩みとコンプレックス
「大人になれば体型の悩みなんて気にならなくなるだろう」と思っていましたが、実際は年齢を重ねても悩みのかたちが変わるだけでした。
会社の健康診断や社員旅行での温泉が苦痛
大人になってからの悩みは、職場の健康診断(心電図やレントゲン)や社員旅行の温泉でした。
健康診断で上半身裸になるときや、大浴場で周囲の目が気になり、ついついタオルで胸元を隠すような仕草をしてしまいます。
「いい歳した大人が体型を気にしていると思われるのも恥ずかしい」という二重の葛藤があり、温泉旅行は昔から大っ嫌いで何かと理由をつけて避けがちでした。
夏場などの薄着になると服の上からでも凹みが分かってしまう
Tシャツやビジネスシャツなど、薄手の服を着ると胸の凹みとお腹の出っ張り(あばら骨)のせいで、お腹がぽっこり出ている様に見えてしまうのも悩みの一つです。
服の上からでも体型の悪さが伝わってしまうのが嫌で、ファッションを素直に楽しめません。
コンプレックスを克服できたきっかけは「自力の筋トレ」
実は私、30代後半でタバコをやめたのですが、そこから一気に激太り……。
長年自分の体型から目を背けてきましたが、50歳手前で「手術は怖くて無理だけど、筋トレならできるかもしれない」と思い立ち、自宅やジムでの肉体改造を始めました。
ただ、それがよかったのかトレーニングを始めてみると、超痩せ型だった昔と比べて明らかに筋肉の付きが良くなった感覚がありました。
1年間コツコツ筋トレを続けた結果、胸の凹みが完全に平らになったわけではありませんが、大胸筋の厚みがつき、あばら骨の出っ張りが引っこんで見た目がガラリと変わりました。
「自分で自分の体を変えられた」という成功体験が得られたことで長年の心のつっかえが取れ、結局は「自分が勝手に気にしていただけで、周りはそれほど他人の体を気にしていない」という事実にも自然と気づくことができました。今ではスポーツクラブでの水泳も人目を気にせず楽しめるようになっています。
私が1年間で実践した具体的なメニューや、胸の凹みを隠すための筋トレの工夫については、こちらの記事にまとめています。

また、筋トレと同時にプロテインを活用して「ガリガリ体質」を克服した体験については、こちらで紹介しています。

漏斗胸に関するよくある疑問・Q&A(原因・重症度・遺伝など)
私も当事者なので、いろいろ調べました。
「漏斗胸ってどんな病気?」「子供に遺伝する?」「自力で治せる?」など、漏斗胸に関してよくある疑問について、医療的な概要と私自身の40年の体験談を交えてまとめました。
漏斗胸(ろうときょう)とはどんな病気ですか?重症度の基準は?
漏斗胸(ろうときょう)の名前の由来は、理科の実験で使う「漏斗(ろうと)」に形が似ていることから来ています。胸が出っ張る「鳩胸(はとむね)」の逆の症状です。

胸壁の中央部が凹んで変形している状態で、視診や画像検査、心電図、呼吸機能検査などによって以下の4段階で評価されます。
- 軽度:言われなければ気づかない程度で、障害を起こさないことが多い
- 中度・中重度:仰向けで寝て、乳首を結んだラインより2.5cm以上胸骨が陥没している
- 重度:大きな陥没により、心臓や肺が圧迫されて心肺機能が低下し、日常に影響が出る
私自身は「胸の真ん中に拳が半分埋まる程度の凹み」がありますが、日常生活や運動(学生時代の水泳部、大人になってからのハーフマラソン完走など)には全く支障がないため、「中度〜中重度」レベルだと思います。生活面で困ったことはないので、自分自身で「病気だ」と意識したことはありません。

幼少期にあった「心臓に針を刺されたような激痛」の記憶
日常生活に困ることはありませんでしたが、一つだけ強烈に覚えているのが、幼少期から高校を卒業するくらいまで年に数回(数ヶ月に一度)起こっていた「胸の痛み」です。
痛みの強さを例えるなら、まさに「心臓に針を刺されたような激痛」でした。
痛みが走った瞬間はあまりの激痛に手で胸を押さえ、体が前のめりになります。ピークの数秒が過ぎた後も、約1分間は大きく息を吸うことができません。大きく呼吸すると「ズキッ」と激痛が走るため、肺を膨らませないよう小さな呼吸でじっと我慢していました。
2〜3分も経てば普通に呼吸ができるようになり復活できたため、当時は「いつものことか」と親や医者に相談することもなく大人になりました。これが漏斗胸の影響だったのか、別の原因だったのかは分かりませんが(大人になった現在は全く症状が出ません)、当時は強烈な痛みに不安を感じたのを覚えています。
漏斗胸の原因は何ですか?
はっきりとした原因は解明されていませんが、骨の成長バランスが関係していると言われています。
一般的には「肋軟骨(ろくなんこつ)が他の骨より早く成長して不均衡が生じることによる陥没」や、「肋軟骨が短いことによる形成異常」などが原因と考えられており、女性よりも男性に多く見られるとのこと。
漏斗胸は子供に遺伝しますか?
統計的には約75%が遺伝、約25%が突然変異と言われています。わが家の実例もほぼそれに近い数値です。
私自身は両親とも漏斗胸ではなかったので「突然変異(約25%)」のケースでした。一方で、中度〜重度レベルの私と、漏斗胸ではない妻との間に生まれた我が子たちの場合は以下のようになりました。
- 1人目:誰が見てもわかる「中度」の漏斗胸
- 2人目:言われないと気づかない「軽度」の漏斗胸
- 3人目:漏斗胸ではない
3人中2人(3分の2の確率)に遺伝しているため、統計の「約75%は遺伝する」という数値はあながち間違いではないと実感しています。
手術なしの筋トレだけで漏斗胸は治りますか?
骨そのものを矯正して根本から治すには手術(ナス法など)しかありませんが、筋トレで「見た目」をカバーすることは十分に可能です。
現在主流の手術は、胸の横を切って金属製プレートを挿入し骨を挙上する「ナス法」です。ただし、ナス法にはプレートを抜去するための2回の手術が必要で、1回目が約120万円、2回目が約80万円(保険適用で自己負担は軽減されるらしい)という高額な費用がかかります。また、臓器を傷つける危険性や感染症、後戻りのリスクなどデメリットも存在するとのこと。
私は手術が怖かったこともあり「運動に影響がないなら手術の必要はない」と判断し、自力の筋トレで見た目を改善する道を選びました。

リオ五輪メダリストのコーディ・ミラー選手のように、漏斗胸でも鍛え上げて素晴らしい体型になっているアスリートもいます。大胸筋や腹筋群を鍛えることで、外見上の凹みはかなり目立たなくできます。
漏斗胸だと筋肉がつきにくかったり、太りにくかったりしますか?
体質的に痩せ型(ガリガリ)の人が多く、胸の中心に筋肉がつきにくいため変化を感じにくい傾向があります。
私も40歳を超えるまでBMI(体重÷身長÷身長)が17前後の超痩せ型で、小さいころの健康診断では毎回「痩せすぎ」と診断されていました。漏斗胸の人が筋肉のつきにくさを感じる主な理由は以下の2点だと思います。
- そもそも痩せていて体に脂肪や筋肉が少ない
- 胸の中心が窪んでいるため、筋肉がついてもわかりにくい
また、漏斗胸の人は「内臓が押されることで胃下垂になる!」みたいなこともたまに書かれていて本当なの?と思いますが、実際に私も病院のバリウム検査で医者から「あなた、胃下垂ですね!」「胃が骨盤のあたりにありますよ!」と言われた経験があり、食後の胃もたれや下腹部の膨らみにも悩まされていました。
胃下垂の改善には、ドローインやレッグレイズなどでお腹周りの深層筋(インナーマッスル)を鍛えることが効果的で、改善されるそうです。

まとめ
漏斗胸という体型は、経験した人にしか分からない独特の悩みやコンプレックスがあります。
過去には「結婚できないかも」「キモいと言われるかも」と一人で頭を抱えた時期もありました。中学校の水泳部時代に言われた何気ない言葉やイジられ方、大人になって温泉で感じた居心地の悪さは今でも記憶に残っています。
「漏斗胸だから」と諦めてしまうのではなく、今の自分にできる小さな工夫(姿勢の改善、筋トレ、栄養管理など)を積み重ねていくことで、コンプレックスは少しずつ和らいでいきます。
50代になってから体のコンプレックスに向き合い、コツコツと自分を変えていく過程を経験しましたが、この「今日明日で諦めず、時間をかけて大きな成果を育てる」という考え方は、私が長年続けている資産形成(インデックス投資)とも深く通じるものがあります。
体型も資産も、自分の将来のためにコツコツ育てていくプロセスそのものが日々の励みになっています。もし資産運用や50代からの将来の備えに興味がある方は、こちらも覗いてみてください。

彼氏や家族、ご友人に漏斗胸の方がいる方も、この記事を通して「過度に心配しすぎず、個性の一つとして受け止めるきっかけ」になれば幸いです。
